財産分与のケーススタディ

財産分与のケーススタディ

財産分与におけるさまざまなケースをまとめましたので,参考にしてください。

① 夫婦間の借金

夫婦に借金がある場合には,その借金が生じた背景によって財産分与に与える影響が異なります。
食料品の購入や医療費,教育費など,夫婦が共同生活を送っていく上で欠かせないものを購入するために生じた借金については,夫婦共同の債務となり,借金をお互いに分け合って返済する義務があります。この場合は,財産分与の際に,借金がマイナスの財産として考慮されます。
例えば,プラスの財産が1000万円で,夫婦共同の債務が200万円の場合,財産分与の対象にするのはプラスの財産である1000万円から債務の200万円を引いた800万円となります。
他方,ギャンブルや浪費など,夫婦の共同生活を送る上で必要不可欠ではないもののために生じた借金は,財産分与の際には考慮されません。したがって,借金の返済義務は,その借金を生じさせた方にのみあります。

② 離婚後の年金・退職金

退職金も財産分与の対象となります。離婚時に相手が退職していない場合でも,将来退職金をもらうことが確定している場合には,同様に対象となります。ただし,退職金が支払われる確証が無い場合は,退職金を財産分与の対象としない場合が多いようです。
退職金の財産分与は婚姻期間と勤続年数を考慮して決めます。
具体的な計算方法は,「退職金×婚姻年数÷勤続年数×貢献度」となります。
例えば,退職金1000万円,勤続年数40年,うち婚姻年数20年だった場合,財産分与の対象は500万円(=1000万円×20年÷40年)となります。ここで妻の貢献度を考慮し,財産分与の割合を50%とした場合,分与される財産は250万円となります。
貢献度は夫婦で話し合って決めますが,話がまとまらない場合は調停を申し立てます。実際には,どちらがどれだけ貢献したかを判断するのは非常に難しい問題ですので,収入額だけではなく,家事労働も評価の対象として,5:5として認められる傾向にあります。

③ 不動産のローン

例えば,マンションのローンが残り3000万円,売却価格が2800万円の場合,財産分与の対象になるのはローンからから売却価格を引いた200万円となります。売却せずに住み続けたい場合は,名義人を自分の名前に変更し,ローンも借り換えて払う方法もあります。なお,夫婦で話し合って,変更せずに住み続けることも可能です。

共働き夫婦の家事分担率

夫婦ともにフルタイムで仕事をしている場合,財産分与の割合は原則として50%:50%になります。ただし,共働き夫婦で家事を分担している割合が極端に偏っている場合は,家事労働分が財産分与の割合に上乗せされます。
例えば,双方ともに芸術家の夫婦でありながら,婚姻生活18年の家事を妻が担ってきたという実際の裁判例では,妻の家事労働分が考慮され,財産分与の割合を夫40%:妻60%とした判決があります。

離婚の際の財産分与について、もっと詳しく知りたい方は…

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